『家賃保証』という落とし穴 その1
アパート経営をされている方で、不動産会社の家賃保証や一括借り上げというシステムを採用している大家さんもおられると思います。
新築時に『これからずっとアパート経営をしていく不安や心配、リスクを解消する』ための一つの選択肢かもしれません。
私が今までに会った方(これから賃貸住宅を検討されている)は、異口同音に「保証」という言葉を出されます。気持ちも判らないではないのですが、あまりにも安易に考えている傾向があります。
中小から大手まで、どの建築会社、建築メーカーもこのシステムを導入しています。
実際に14〜15年前からこのシステムを導入・採用して、大きく伸ばしている建築メーカーもあります。
最近では、保証付きでないと建築が受注できないジレンマも手伝い、土地活用のオプションとして急速に建設業界に拡がっています。建築屋さんも受注活動で大変です。
しかし、これからアパートやマンションを建てる方に、少し冷静になって考えてみて欲しいのです。
「家賃保証」や「一括借り上げ保証」というシステムの歴史を考えると、私の記憶では一番古くても14〜15年前ぐらいではなかったかと思います。まだ、このシステムは14,15年程度の歴史しか持ち合わせていないのです。
現実にこのシステムで当初建設された方の中には、10年ほど経て賃貸経営の保証率の低下やトラブルに会い、当初の機能がまったく働いていないケースも多々あります。
このことはオーナーさんから直接聞きましたので事実です。
しかし、建築会社や不動産会社が謳うこのシステムのキャッチフレーズは、20年或いは30年の「長期入居保証・一括借り上げ保証」です。
まだ10数年程度の歴史しかない、実績のないこのシステムが今後30年にも渡って存続できるものでしょうか?
しかも時代変化の早いこの時代に、30年先を読むことができるものでしょうか?
そう、建築会社、メーカーの人たちは、そんなことはいち早く気付いているのです。気づいているにもかかわらず、建築受注という大きな目標があるため、やむを得ず「やけくそ」でやっているわけです。
建築受注というのは、仕事を逃すと金額が大きいだけに痛手が大きい?まさに「赤信号、皆で渡れば怖くない」の右へ倣え方式です。
そんなに良いものなら、自社で20年30年を保証すればよいのです。
しかし、実際にはほとんどの建築会社、メーカーは自ら傷つくことを逃避し、「系列グループ不動産管理会社」へ委託という形態をとっています。
企業として、20年先のリスクやトラブルを予見して逃げ場を作り、本体の被害を避ける思惑に気が付きませんか?
私が知っている管理会社は当初、本体の営業支援ということで発足しましたが、経営が軌道に乗ると営業の側面支援という大義名分を忘れて、経営内容の充実が先行し始め「儲ける」ことに走り出しました。
そうなるとどこで営利を稼ぐかというと、入居者から巻き上げるか、残るターゲットは「大家さん」ということになります。
管理戸数が多くなればなるほど、長期になればなるほど、管理する旨みが出てくるようになるシステムです。
たとえ、今後古くなって入居率が悪くなったとしても、管理会社のリスク負担無しに維持管理できる方法を彼らはちゃんと用意しています。
そうやって当初の目的や意義が、どんどんかけ離れていくようになってしまうのです。
将来のリスクを先送りし、現在のマージンに変える建設業界の 企業体質はいつまでたっても改善されません。
『家賃保証』という落とし穴 その2
将来のリスクを先送りし、現在のマージンに変える業界の企業体質は、いつまでたっても改善されません。
「家賃保証」というカラクリ、そしてその実態について考えてみましょう。
新築時に家賃保証を管理会社と契約し「これで○年間、継続的に安定した家賃が入ってくる。」と、安心しているアパート経営者がたくさんおられます。
家賃保証の内容を正しく捉えている人は少ないようです。
契約書をじっくり読んで理解を深めれば、ちょっとした疑問点に気付くはずです。
10年も20年もずっとその 家賃−保証料=残家賃が確定的に入ってくると思いますか?
はっきり云ってそれは「あまい!」
アパート経営というものは、新築時から10年前後で確実に家賃が下がります。
これはあくまで10年前に建てられたアパートを目安にしているだけで、今後の厳しい賃貸市況を考えると、これから新築するアパートは7〜8年に短縮されるでしょう。
もう一度言いますが、借り上げ(家賃保証)契約書をよく読んでください。
契約書に「借り上げ賃料は○年毎に見直す。」と必ず謳っているはずです。ここがミソなのです。
賃料を○年毎に見直すということは、「管理会社は定期的に賃料を改定できる」ということです。
管理会社がイニシアティブを取れる内容であるわけで、「家賃を下げてもらわないと、契約を維持できませんよ」「条件を呑まなかったら契約を解除しますよ」と、管理会社はこんなことも言える立場なのです。
先程もいったように、古くなって10年前後になると、古いアパートの周辺相場はどんどん下がっていきます。
その時、○年毎に見直す時期であれば、管理会社は当然のように賃料の改定の提示をしてきます。
あなたはその時、その条件を呑みますか?それとも、呑まない?
呑まなければ、管理会社は「それでは、残念ながらこの契約は解除いたします。」
あなたはあわてて、その条件をしぶしぶ呑むことになります。
こういったストーリーの展開が予想され「家賃保証」という言葉は「有って無きに等しい」ことになるのです。
また、もう一つ、皆さんの知らないことがあるのです。
管理会社が提示する条件は賃料だけではありません。
古くなると建物の内外部は相当傷んでくることでしょう。
贅沢な入居者の要求に応えるためにはそれ相応のリフォームが必要となってきます。
ここで管理会社は、当然のようにオーナーに対して「家賃を維持するためには内装や外装、設備の更新が必要です。」「その為には、この空室になった部屋の全面リフォームをご提案します。」「この条件を呑まなければ、家賃保証を解除しなければなりません。」
あなたは管理会社の提出した見積もりを見てびっくりします。
「な、なんと、何百万!?」「わずか10年前後でこんなにお金を必要とするのか?」
それもそのはず、管理会社は下請け工務店の出した見積もりに、○パーセントの利益をオンさせているのですから・・
それを見てあなたは興奮し、「こんなことなら家賃保証なんかするんじゃあなかった。」「保証を解除するというなら、それも考えなくてはいけないな。」
管理会社は待ってました、とばかり家賃保証を契約解除することに・・・しかし、他の不動産会社に乗り換えられては困るので
「残念ですね。でも、管理料の安いコースもあります。そのコースへ変更してはどうでしょうか?それだったら、このような条件は強制しません。」
契約書の内容を盾に取られると、オーナーも妥協せざるを得ず、泣く泣く家賃を下げたり、膨大なリフォーム費用をアパートに再投資しなければなりません。
条件の見直しとは家賃だけではなく、その他の条件(リフォームや設備の更新)も含まれているのです。
これが家賃保証のカラクリ、実態です。
良いと思って採用した家賃保証(借り上げ)というシステムは10数年経つと陳腐なシステムであったりするわけです。